タップダンスって、どんなダンス?

タップダンスと言えば、華麗なステップと軽快な足音が魅力のダンスですよね。

映画やミュージカルなどで、誰もが一度は目にしたことがあるダンスだと思います。

しかしタップダンスにもジャンルがあることや、あの素敵な足音がどのように踏み鳴らされているかを、あなたは知っていますか?



この記事ではタップダンスの歴史にも触れながら、タップダンスがどのようなダンスであるかを分かりやすく解説します。

これからタップダンスを始めたい方は、是非この記事を読んで、タップダンスのイメージを掴んで下さい。

タップダンスって、どんなダンス?

①タップダンスのルーツ



今でこそ華麗なショーダンスの一つとして知られているタップダンスですが、そのルーツがどこにあるか、あなたは知っていますか?

実はタップダンスのルーツはその明るい印象とは反対に、人類の負の歴史にあります。







かつてこの世界には、奴隷制度という忌まわしき制度がありました。

奴隷制が生まれた背景には、戦争や人種差別がありました。







タップダンスのルーツには、人種差別による奴隷制度が深く関係しています。

その時代では、主に白人の奴隷主が、黒人の奴隷を物のように売り買いしていました。

黒人奴隷にはまともな人権が与えられず、その扱いは家畜以下だったとも言います。







奴隷として母国のアフリカから欧米へ連行された黒人達は、歌や踊りを一切禁じられていました。






黒人達にとって歌や踊りは単なる娯楽ではなく、自分の意思を表現するために必要不可欠なものした。

ソウルミュージックというジャンルがありますが、歌や踊りはまさに黒人達の魂なのです。








白人の奴隷主達は、歌や踊りを通して黒人達が士気を高め、反乱を起こすことを恐れていました。

実際に、そういった反乱が何度も起こっていたようです。

だから歌や踊りを禁じたのです。








しかしそれでも黒人達は魂を失うことを拒絶し、歌や踊りの代わりに自分達の裸足を地面に打ち付ける音で、気持ちを表現するようになりました。

またそれは言葉の代わりとして、コミュニケーションのツールとしての役割も果たしました。

これがタップダンスの起源と言われています。







奴隷制が終わってからも、黒人達は厳しい人種差別と闘い続けてきました。

どんなに辛い状況になっても、魂を失わず、明るく前向きに生きる。

タップダンスを踊ることは、その強い気持ちを体現することでした。

タップダンスの神様ビル・ボージャングル・ロビンソンの動画。彼は歴史上初めて、白人の俳優と同じスクリーンに映った黒人俳優と言われています。


このように実は暗いルーツを持っているタップダンスですが、その暗闇を通り抜けてきたダンスだからこそ、人々を引きつける魅力に溢れたダンスに進化したのかもしれませんね。

これからタップダンスを始める方も、きっとタップを踊ることでどんどん明るく前向きになっていくと思いますよ!

僕がそうでしたから(笑)




②タップダンスのジャンル




タップダンスには、大きく分けて二つのジャンルがあります。






一つは、その名の通りミュージカルの映画や舞台でよく見られるミュージカルタップです。

ミュージカルタップは足音だけではなく、上半身も含めた体全体の動きの美しさも大切にしたジャンルです。


映画で言えば『雨に唄えば』でジーン・ケリーが雨の中で踊る振付は、あまりに有名ですね。

雨に唄えばの歴史的名シーン


それから日本の映画では、北野武さんが監督・主演を務めた『座頭市』のラストシーンもミュージカルタップですね。

HIDEBOHさん振付の、座頭市ラストシーン


振付はメディアへの露出も多い、日本を代表するタップダンサーHIDEBOHさんです。

HIDEBOHさんの記事はこちら→(https://www.tap-lover.com/tapdance/hideboh/)

海外の文化であるタップダンスと、着物や和太鼓、下駄などの日本文化を上手くミックスしてオリジナリティ溢れる振付を作った、一つの金字塔ともいえるシーンでした。




これからタップダンスを始めようと思っている方は、是非観てみて下さいね。





もう一つのジャンルは、タップの足音を楽器の演奏のように捉えて表現する、リズムタップです。


リズムタップは、決まった振付がなく、インプロビゼーション(即興)で足音を踏み鳴らし、自分を表現していくジャンルです。

タップダンスはジャズと密接に結びついて発展したダンスですから、インプロで踊ることがよくあるんですよ






決まった振付を完璧に躍りこなすのも格好良いですが、インプロで自分の音楽性や想いを表現するのもクールですね。

ジャズだけでなく、ヒップホップなんかと合わせて踊ると滅茶苦茶カッコいいです!

世界最高のリズムタップダンサー セビアン・グローバーによるインプロビゼーション





それにタップダンスのルーツを考えると、タップの足音は自分の想いを表現するために生まれたものですから、そう意味では溢れるままに気持ちを足音にするリズムタップは、タップの本質を体現していると言えます。







日本人では、熊谷和徳さんが有名ですね。

彼は現在NYと日本を拠点に活動しており、日本人タップダンサーとして初めてブロードウェイミュージカルのオーディションを突破したり(ビザの関係で出演はできず)、全米でも由緒ある賞を受賞するなど目覚ましい活躍を見せています。

ピアノに合わせて踊る熊谷和徳さん





熊谷和徳さんの記事はこちら→(https://www.tap-lover.com/tapdance/kaznorikumagai/

と、こんな風にタップダンスはミュージカルタップとリズムタップの二つにジャンルが分かれています。

あなたはどちらのジャンルが好きですか?

是非YouTubeなどで色んな映像を見て、自分の好きなダンサーを見つけてみて下さい。




③タップダンスの足音は、靴底のチップで鳴らしている



タップダンスに使われるタップシューズの靴底には、爪先側と踵側に金属製のチップが付いています。

爪先側のチップをボール、踵側のチップをヒールと呼びます。





タップダンスはこの二枚のチップと、爪先(トウ)や靴の側面(サイド)を床に打つ付けることで足音を鳴らしています。

ダンサー達は軽やかにステップを踏んでいますが、その中で主にこの二枚のチップを絶妙なタッチで床に当てていると思うと、凄いですよね。






ハリウッドミュージカルを代表するスターだったジーン・ケリーやフレッド・アステアのタップダンスは、動きも足音も最高に美しいです。

リズムタップで言えば現代タップダンス界最高のスターであるセビアン・グローバーや、彼の師匠的存在であるグレゴリー・ハインズの足音は、ジャズドラマーも真っ青の抜群のリズム感と、旋律があります。

グレゴリー・ハインズの動画






主に二枚のチップだけで足音を鳴らすタップダンスには、バス、タム、シンバルなどがあるドラムに比べると、鳴らせる音の種類は少ないですね。

しかしその分、チップの当て方を絶妙にコントロールして、足音の表現に幅を持たせているのです。





不自由から生まれた自由であるタップダンスは、限られた条件の中で無限の表現を追求しているからこそ、人々の心を引きつけます。

「どうやってあんな足音が鳴っているの?」

熟練したダンサーのステップと足音は、まるで魔法のようです。

しかもそれをさらっと簡単そうに見せるのが、「粋」な踊りなんです。





ブレイクダンスやヒップホップなどとはまた違った、タップダンスの魅力ですね!

タップダンスって、どんなダンス? まとめ

①タップダンスのルーツは、奴隷としてアフリカから欧米へ連れてこられた黒人達にある。歌や踊りを禁じられた過酷な状況の中で、彼らは裸足を地面に打ち付ける足音で想いを表現するようになった。

②タップダンスには、ミュージカルタップとリズムタップの二種類がある。ミュージカルタップは足音だけでなく体の動きの美しさも大切にし、リズムタップはタップを楽器と捉えてインプロビゼーションで踊る。

③タップシューズには爪先側(ボール)と踵側(ヒール)にそれぞれ金属製のチップが付いている。それを床に当てることで、足音を鳴らしている。




この記事ではタップダンスがどのようなダンスであるかを解説しました。

タップダンスはとても奥が深く、大枠の部分しか書いてはいませんが、タップについてのイメージを膨らませて頂けたら幸いです。

ちょっとでもタップダンスに興味が湧いた方は、是非動画を見てみたり、思い切って習い始めてみて下さい!

毎日が楽しくなりますよ!